福井県の観光名所

【丸岡城】一筆啓上 石瓦の現存天守が紡ぐ400年の物語

石瓦葺きの天守と日本一短い手紙に込められた想い

丸岡城】現存天守十二城で唯一の石瓦葺き

 こんにちは!今日は福井県坂井市にある日本現存天守十二城で唯一の石瓦葺きである丸岡城を訪れてきましたので、その魅力をお伝えしたいと思います。

 福井駅から車で約30分、丸岡城の駐車場に到着。入場チケットを買って3分ほど坂道を登るとそこには丸岡城がどっしりと構えていました。

 丸岡城は、天正4年(1576年)に柴田勝豊によって築城されました。

 織田信長が越前一向一揆を平定した後、家臣の柴田勝家に越前国の大部分の支配を命じました。柴田勝家は甥の勝豊に東の山中の豊原を与え、これが丸岡城の始まりとなりました。

 織田信長が生きていた400年以上前の城が現代まで残っているなんてびっくりしてしまいますね。

 城内に入ると当時の丸岡城周辺のジオラマがありました。この五角形の内堀は明治時代に埋め立てられ、現在では小高い丘となっています。

 園内には約400本のソメイヨシノが植えられ、その美しい景観から「日本さくら名所100選」に認定されています。

 毎年4月には、城下町で「丸岡城桜まつり」が開催され、夜間のライトアップも楽しめます。満開の桜が天守を彩る様子は、まるで花霞に包まれたような幻想的な風景を作り出し、多くの観光客を魅了しているそうです。

 私は夏に丸岡城を観光したのですが、春の桜が咲く時期に行くのがおすすめかもしれませんね。

 3階建てだったのですが階段がとにかく急で、登るのに苦労をしている方もいました。傾斜67.5°であり、手すりをうまく活用して登りました。十分ご注意して昇降をしてください。

 スペースを有効活用するためにこんなに急にしたのでしょうか。昔、お殿様が必死で登っている姿を想像するとちょっと微笑ましい気もしてきました。

 そして、こちらが丸岡城の天守から見た坂井市の景色です。豊かな自然と人間の営みが調和して存在しているなあとしみじみしました。

 少し曇ってはいましたが、遠くの山嶺がとても美しく緑も映えていました。

 丸岡城の最大の特徴は、約6000枚の石瓦を使用した屋根です。重さは屋根全体で120tにも及びます。日本の現存天守の十二城のうち唯一の石瓦葺きで、豪雪地帯の気候に適した構造となっています。

 普通の瓦では寒さに弱く割れてしまうことがあり、寒さに強い笏谷石の石瓦が用いられました。笏谷石は、福井県の足羽山のみで採掘される凝灰岩で現在は採掘されていない、大変貴重な岩石です。水に濡らすと青色に変化するため、丸岡城は雨が降ると表情が変わる城としても知られています。

 雨が降っても違った楽しみ方ができて素敵ですね。実は福井県の年間降水日数は2022年のデータで167日であり、新潟県と富山県に次ぐ降水日数の多さです。平均が112日だと考えるとかなり雨の日数が多いですね。特に秋から冬にかけては毎日のように雨や雪が降っているイメージです。

 こちらは石製の鬼瓦であり、古代より災いや邪気除けの願いが込められています。この写真は東側のであり、西側にはの鬼瓦があります。

 実は、1948年の福井地震天守は完全に倒壊しましたが、1955年に主要部材の70%以上を再利用して修復されました。この奇跡的な復興により、現在も丸岡城は福井県が誇る歴史遺産として存在しているそうです。

丸岡城

営業情報
  • 営業時間:8:30〜17:00(最終入場は16:30)
  • 休館日:年中無休
  • 入城料
    • 一般 450円 小中学生 150円
      (一筆啓上 日本一短い手紙の館の入館も可能)
アクセス
  • 住所:〒910-0231 福井県坂井市丸岡町霞町1-59
  • 交通手段
    • 車:北陸自動車道・丸岡ICから車で約5分
    • バス:
      • 福井駅から 京福バス「丸岡線」で「丸岡城」バス停下車(約45分)
      • JR芦原温泉駅から 京福バス「芦原丸岡永平寺線」で「丸岡城」バス停下車(約20分)
    • 電車:JR丸岡駅からタクシー(約8分)
その他施設情報
  • 無料駐車場あり(40台)
  • ボランティアガイドあり

お問い合わせ: 0776-66-0303
※記事に掲載した内容は公開日時点の情報です。変更される場合がありますので、HP等で最新情報の確認をしてください

そば処 一筆啓上

 丸岡城のある霞ヶ城公園内の「一筆啓上茶屋」内のそば処「一筆啓上」おろしそばをいただきました。

 福井県を代表する郷土料理といえばおろしそば。黒っぽくてやや太めの田舎そばに、大根おろし、ネギ、かつお節をのせ、ダシをぶっかけて食べる福井県のソウルフードです。大根を「薬味」ではなく「出汁」として利用しており、少し辛めなのが特徴です。

 券売機で食券を買うシステムでしたが、蕎麦湯がないか厨房へ確認したところ、快く提供していただきました。辛めの出汁がつんとしてとても美味しかったです。

 福井県人セットというものがあり、おろしそばに加え福井のソウルフードの片棒であるソースカツ丼もついてくる、福井を体感できるセットとなっています。

 そば処の隣には土産物売り場があり、地酒、米、お菓子、織物を使った小物など丸岡の名産品を多く取り揃えています。

 外には丸岡産米粉をを練り込んだ「コシヒカリのおこげソフト」などを販売しているソフトクリーム屋がありとても賑わっていました。営業期間は3月中旬〜11月中旬だそうですので注意が必要です。

ワンポイント豆知識 〜コシヒカリ発祥の地〜

 日本有数の米の品種である「コシヒカリ」名前の由来「越(こし)の国に光かがやく」という願いからですが、実は福井県が発祥らしいです。 以下の流れでコシヒカリは誕生しました。

  • 1944年:新潟県の農事試験場で品種改良の研究開始
  • 1948年:福井県が研究を引き継ぎ
  • 1945~1952年:福井県農事改良実験所(現:福井県農業試験場)で石黒慶一郎氏らが「越南17号」を開発
  • 1956年:コシヒカリを「農林100号」の新品種として登録

 コシヒカリといえば新潟県のイメージが大きいですが福井県と新潟県の協力で誕生したのですね。

 福井の小学校の副読本に「コシヒカリのふるさとは福井県」と記されるなど、福井県ではお米の英才教育がなされているらしいです。

 「農林22号」と「農林1号」を交配したというのですが、日本の米の歴史がとっても気になってきたので今後記事としてまとめていきたいと思います。

そば処 一筆啓上

営業情報
  • 営業時間:10:30~16:00 火曜日は10:30~14:00
  • 定休日:不定休
  • 現金精算のみ

【一筆啓上 日本一短い手紙の館】短い手紙から物語を想像する

 「一筆啓上 日本一短い手紙の館」日本の手紙文化の発信拠点で、2015年8月23日に開館しました。

 施設の目的は、簡潔な言葉で心を伝える日本の手紙文化を守り人々の心の触れ合いを促進することであり、「一筆啓上賞 日本一短い手紙」コンクールの入賞作品が展示されています。

 短い手紙だからこそ、その背後にある物語を想像させ、読む人の心に深く響くものがあるのだと思います。とっても素敵で心に残った手紙をいくつか紹介いたします。

「ばあちゃんへ」                  
ケーキ残すの3年連続!
大好きって言ってたじゃんか。
花の水換えて線香立てていくね。

                   新潟県 神喰 雄太(29歳)

旅で出逢った日の妻                   
最終バスに乗り遅れたあのとき、
わざとゆっくり歩いていたんだ。
たぶん、君もね。

                   沖縄県 森山 高史(74歳)

「今年亡くなった祖父へ」                   
火葬場から帰る車の中、
膝の上に小さい爺ちゃんが居て、
あぁ昔と逆だなって思ったよ。

                   福井県 西野 日菜(25歳)

 

 日本一短い手紙の館は海外にも日本の手紙文化を広める活動をしており、国際的な文化交流の場となっております。

 第一回「日本一短い『母』への手紙」コンクールでは、海外18か国を含む世界各地から32,236通の応募がありました。第8回一筆啓上賞では英語部門が設けられ、海外からの参加者も入賞しています。

 海外に向けた英語での手紙もご紹介いたします。

「To my mother」                                       
"You are Kind. You must have been raised by a nice and kind mother"
I'm your daughter.

This is the conversation I had with my mother with progressive dementia.
I'd like to let her know Iwas happy to be praised.
                                   Ito Mariko(68歳)
「お母さんへ」                              
「あなたは親切ね。優しくていいお母さんに育てられたのね。」
私は、お母さんの娘ですよ。


認知症の症状が進む母とのやりとりです。
褒めてもらって嬉しかったことを母に伝えたいです。
                             いとう まりこ(68歳)

「To my husband」                                         
"At our wedding ceremony, when I was wearing
pure white kimono and big white hood,
with a huge smile you said to me, "You really look like *Oba-Q."
I'll never forget that.

Even now, I remember that whenever I look at the photos of our wedding ceremony.

*Oba-Q:short for "Obakeno Q-Taro," a cute and funny, little ghost anime character.
                                  Sato Hiroiko(68歳)
「夫へ」                              
結婚式で白無垢(むく)綿帽子の私に、
満面の笑みで「リアルオバQ」って言ったの忘れないから
                             新潟県 佐藤 浩子(49歳)

 第28回「笑顔」のテーマではこのような作品が大賞を獲得していました。

「自分へ」                             
説教中、親を笑顔で見つめたらもっと怒られました。
もう私は天使ではないようです。
                   横浜市 上田 泰守(15歳)
「こどもたちへ」                           
迷ったら、笑顔が生まれる方へ、進んでください。
                   栃木県 嶋崎 有子(52歳)

 8歳の小学生も面白い手紙を書いています。

「あしたのじぶんへ」                      
夏休みの友も絵も今日中にしあげるぜ。
おれはくるしいぜ。でも、あしたはじゆうだぜ。
                   福井県 野坂 泰誠(8歳)

 心温まる家族愛甘酸っぱい恋愛のがテーマの手紙は、ほっこりしたり笑えたりと心に染みこんでいきました。人との別れや故人との思い出に関するテーマの手紙も、周囲を忘れて涙がこぼれ落ちそうになるようなものばかりでした。

 手紙を書いた人の背景や物語を想像したり、自分と重なる部分を見つけたりと楽しみ方はたくさんあると思います。ぜひ訪れていただきたいおすすめの施設です。

 丸岡城のすぐ近くにあり、小窓からは天守を見ることができました。

 続いて「一筆啓上 日本一短い手紙の館」の館名の由来についてご紹介します。

 徳川家康の家臣・本多作左衛門重次が戦場から妻に宛てた以下の短い手紙がモチーフとなっています。

一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ

本多作左衛門重次

 

 この手紙は、家族への思いやりや戦場からの気遣いを短い文章で簡潔に伝えた名文として知られています。その意味を解説します。

  • 一筆啓上
    手紙の冒頭に書かれる挨拶で、現代の「拝啓」に相当します。
  • 火の用心
    家の火事を防ぐため、火の取り扱いに十分注意するよう妻に伝えています。当時は火災が大きな被害をもたらすため、特に重要な注意事項でした。
  • お仙泣かすな
    「お仙」は重次の長男・仙千代(後の本多成重)の幼名です。幼い息子を泣かせず、大切に育てるよう妻に頼んでいます。
  • 馬肥やせ
    戦場では馬が重要な戦力だったため、馬をしっかりと養い健康を保つよう指示しています。

 戦場で命を懸ける中でも家族や生活を気遣う重次の人柄が表れており、日本一短い手紙として有名です。また、福井県丸岡町では1993年から、この手紙にちなみ、「一筆啓上賞」という短い手紙のコンクールが開催されています。

1993年(第1回):「母」
1994年(第2回):「家族」
1995年(第3回):「愛」
1996年(第4回):「父」
1997年(第5回):「母への想い」
1998年(第6回):「ふるさとへの想い」
1999年(第7回):「友へ」
2000年(第8回):「私へ」
2001年(第9回):「いのち」
2002年(第10回):「喜怒哀楽」
2003年(第11回):「夢」
2004年(第12回):「ありがとう」
2005年(第13回):「希望」
2006年(第14回):「出会い」
2007年(第15回):「未来へ」
2008年(第16回):「願い」
2009年(第17回):「感謝」
2010年(第18回):「心の手紙」
2011年(第19回):「絆」
2012年(第20回):「ありがとう」
2013年(第21回):「わすれない」
2014年(第22回):「花」
2015年(第23回):「ごめんなさい」
2016年(第24回):「母へ」
2017年(第25回):「父へ」
2018年(第26回):「春夏秋冬」
2019年(第27回):「時」
2020年(第28回):「挑戦・チャレンジ」
2021年(第29回):「ありがとう、さようなら」
2022年(第30回):「挑戦・チャレンジ」(再テーマ設定)
2023年(第31回):「時」
2024年(第32回):「願い」

 第32回の大賞にはこのような作品がありました。

「施設で寝たきりの母へ」                   
タケルが結婚します
ばあちゃん似の優しい人と自慢してたぞ。
その時は目を開けろよな

                   山口県 岡 輝明(64歳)

「娘へ」              
ええと、つまりそのう、
黙って見守ってて欲しい。
・・・父さん恋をした。

                   福井県 山岸 誠(66歳)

 作者の想いを想像するとグッと心にくるものがありました。

一筆啓上 日本一短い手紙の館

営業情報
  • 開館時間:午前9時~午後5時(最終入館は午後4時30分まで)
  • 休館日: 年末年始(12月29日~1月3日)、展示替えのための特別休館あり
  • 入館料(丸岡城の入場券で「一筆啓上 日本一短い手紙の館」の入館が可能
    • 高校生以上: 200円
    • 中学生: 100円
    • 小学生以下: 無料
アクセス
  • 住所:〒910-0231 福井県坂井市丸岡町霞町3-10-1
  • 交通手段
    • 車:北陸自動車道・丸岡ICから車で約5分
    • バス:
      • JR芦原温泉駅から京福バス「永平寺・東尋坊線」で約20分、「城入口」バス停下車徒歩10分
      • JR福井駅から京福バス「丸岡線」で約40分、「丸岡城」バス停下車徒歩8分
    • 電車:JR丸岡駅からタクシー(約8分)
その他施設情報
  • 無料駐車場あり(約150台)

お問い合わせ: 0776-67-5100
※記事に掲載した内容は公開日時点の情報です。変更される場合がありますので、HP等で最新情報の確認をしてください

海外における短い小説の小噺

 今回の日本一短い手紙を見て思い出したのが、海外での逸話である6語の物語(Six-Word Story)です。

For sale: baby shoes, never worn.
(訳:売ります。子供用の靴。未使用。)

 

 こちらは、アーネストヘミングウェイが考案したとされる6語の物語の代表的な例です。この短い文章は、わずか6語で深い感情や背景を読者に想像させる文学的な技法として知られています。

 このフレーズは、ヘミングウェイが友人たちと「6語で物語は作れる」という賭けをした際に考案したと言われています。彼はこの作品で賭けに勝ち、賞金を得たという逸話があります。ただし、このエピソードの真偽については議論があり、確証はありません。

 短い文章ながら、「未使用」という言葉が暗示する悲劇的な背景(例えば、赤ちゃんの死など)を多くの読者が想像します。このように具体的な説明を省きながらも、読む人それぞれに物語を補完させる力があります。

 文学的意義として、読者参加型の物語であり読者が背景や詳細を想像することで、物語に参加する形となり、深い印象を残します。現代で人気のあるフラッシュフィクション(極短編小説)の原点とも言える作品です。

CTAサンプル

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